させてくれるように、被災者の冷たくなった心も人々の温かい
想いできっときっと温まってゆきます。
午後一番の人は右膝が曲がらないおばあちゃんです。
右足を投げ出して座って膝をさすって待っています。
「こんにちはー」
「こんにつはー」
私は初めに少しお話をしてみて、この人を「天井ばあちゃん」と
名づけました。
そのお話とは、おばあちゃんのこんなお話でした。
「地震の後で川を見たら水がぜんぜんなぐなっていたのよ。
これは津波が来るっていうんで私2階さ上がったの、
そしたらそのままドドーンと流されで2階まで水が入ってきたの。
それで天井と水の30センチ位のすきまでやっと息をしていたんだ」
この日は雪が降っていてとても寒い日でした。
「水が引いて、冷たくて寒くて寒くて、びしょびしょのまま
次の日の夜まで過ごしたんだ。そしてやっと助けでもらったの。
外に出てみたら家の一階はなぐなっていて、ずーっと離れた違う
場所に私いたのよ。たまげたねー。でもねぇ、私はお父さんも
息子も助かったがらねぇ、、、」
「すごい生命力ですねー、たいしたもんだねー」と私。
「右膝、曲げると痛いんですね」
「はい」
「こうしてもらうのはどんな感じですか?」
私は膝ウラとふくらはぎのあたりの皮膚をずらしたり、
揉んだり、押してずらしたりとやってみました。
天井ばあちゃんは押してずらすのがいいと言いました。
なのでそれをへらへらしばらく続けました。
その後、右だけ足指と足裏を少し揉んだり揺らしたりしました。
「足があったがぐなったねー」天井ばあちゃんがそう言って
少し微笑みました。
「冷えて痛くなるようなら、ホッカイロを当ててあったかく
した方がいいね。でも寝るときははがしてよ。低温やけどを
するとわるいから」
つづく